とても助かる!自立支援医療(精神通院)

自立支援医療は、認知症の治療費の負担を軽減してくれる制度です。

自立支援医療の対象になる疾患はいくつもありますが、ここでは、認知症の人が利用する場合に焦点をあてています。

夫の申請手続き、および利用してきた中で、私が、わかりにくかったこと、気づいたこと、ここはおさえておいた方がいいと思ったことを書いています。

厚生労働省の自立支援医療(精神通院)についてのPDFもあわせて張っておきます。

かっこ書きで精神通院と書かれているのは、自立支援医療に、精神通院医療、厚生医療、育成医療の3種類あるからです。認知症の人が自立支援医療を利用する場合は、その中の精神通院医療になります。

※このページは、私の経験をもとに書いた堺市の例です。自治体によって窓口や手続き、利用できることなど、異なることがあります。

医療費

自己負担

自立支援医療を利用すると、認知症にかかわる医療は自己負担が1割になり、健康保険の自己負担が2割や3割の場合、負担が軽くなります。

さらに、軽減策として所得や疾病の状態に応じた負担上限額が設定されています。


また、大阪府内の市町村国民健康保険に加入の場合、医療費にかかる自己負担1割が公費で給付されるため、本人負担は発生しません。

堺市ウェブサイト 自立支援医療(精神通院)を利用した場合の自己負担額について 参照

つまり、大阪府内の国民健康保険に加入の場合、認知症にかかわる医療費が無料になります。

※75歳になると国民健康保険から後期高齢者医療保険にかわるので、公費給付がなくなり1割負担になります。


後期高齢者医療保険の方(75歳以上の方)

後期高齢者医療保険が1割負担の場合、自立支援医療を使っても後期高齢者医療保険を使っても同じ1割なので、自立支援医療を利用する意味がないように思われるかもしれません。

けれども、自立支援医療には所得に応じた負担上限額があります。後期高齢者医療保険にも所得に応じた負担限度額はありますが、自立支援医療の負担上限額の方が低い人が多数だと思うので、後期高齢者医療保険が1割負担の人でも、自立支援医療を利用すれば負担が軽減される可能性があります。


認知症にかかわる医療

認知症にかかわる医療の範囲は、病院やクリニック、医師によって差があるようです。

夫の場合、通院で認知症専門医に4年ほど診てもらった後、訪問診療にかえるタイミングで看取りをみすえた内科の医師にきてもらうことにしたのですが、薬の処方はかわらないのに、自立支援医療の対象になる薬が違っていました。医師の考え方で対象になるかならないか、かわってくるようです。


診断書と申請

診断書

利用のための第一歩、かかりつけ医に書いてもらう診断書用紙を保健センター(担当窓口は自治体によって違います)にもらいに行きます。病院またはクリニックによっては用意しているところもあるそうです。

保健センターの窓口で「先生はこの診断書を書いてくれると言っているのか」と聞かれました。自立支援医療は、各自治体に指定された医療機関(指定自立支援医療機関)でないと診断書が書けないし使えません。私は夫のかかりつけ医になんの確認もせずに保健センターに行っていたので「わからない」と答えると、窓口の人が調べてくれ「かかりつけ医のクリニックは指定自立支援医療機関なので、たぶん大丈夫だろう」ということで、診断書の用紙を受け取りました。

夫のかかりつけ医はすんなりと診断書を書いてくれましたが、役所へ診断書用紙をもらいに行く前に、診断書を書いてもらえるか、かかりつけ医に確認しておいたほうがいいですね。


指定医療機関

かかりつけ医に書いてもらった診断書を持って再び保健センターに行き、申請書を書きます。このとき、自立支援医療で利用する医療機関(病院またはクリニック、薬局、訪問看護ステーション)を記入します。その医療機関がのちに発行される受給者証に記載され、記載された医療機関でのみ自立支援医療が利用できます。

申請書には、医療機関の住所も記入します。私はその場でスマホで調べましたが、スマホや携帯をお持ちでなければ、事前に調べていったほうがいいです。

※医療機関はあとで変更できます。


診断書用紙には種類があります

自立支援医療と同時に、精神障がい者保健福祉手帳の申請をすることができます。そうすると診断書が1枚ですむので、夫は同時申請しました。

同時申請する場合は、同時申請ができる診断書(手帳用診断書)を役所で受け取ってください。役所の窓口で同時申請したい旨を伝えれば、その様式の診断書がもらえます。

かかりつけ医にも同時申請したい旨を伝えて、診断書を書いてもらいます。

※同時申請する場合、手帳用の写真が必要になります。

診断書料の公費負担

また堺市では、住民税非課税世帯には、障がい者手帳の申請に必要な診断書料の公費負担制度があり、診断書料がかかりません。

※自立支援医療のみの申請の場合、公費負担はありません。

※公費負担制度を利用するには別途申請が必要です。

お住いの自治体に同じような制度がないか調べてみてください。


利用

受給者証

申請が認められれば、申請書に書いた病院またはクリニックに受給者証が送られてきます。保健センターから自宅には、なんの連絡もありません。

受給者証は基本、病院またはクリニックの保管になります。けれども、薬局や訪問看護ステーションに一度見せる必要があるので、病院またはクリニックで、原本を借りるかコピーをもらいます。別の手続きで受給者証が必要になることがあるので、コピーをもらっておくことをおすすめします。また、病院またはクリニックによっては、原本患者保管のところもあります。

※受給者証の管理は、自治体によっても違うようです。


上限管理表

自己負担上限額が設定された場合、自立支援医療を利用する際、そのつど指定医療機関に自己負担上限管理表を提出する必要があります。病院またはクリニックにおいてあるのでもらいましょう。

管理表を提出すれば、上限額の管理は各医療機関がしてくれます。

ただこれについて、訪問診療や訪問看護で、その場で自己負担額がわからないときは、どのように管理するのかなという疑問があります(うちは上限額を超えたことがないのでわかりません)。


訪問看護を利用するための条件

自立支援医療は、訪問看護にも使えます。

ただし、要介護認定を受けている人が訪問看護に来てもらう場合は、介護保険を使わなければならず、自立支援医療は使えません。

しかし、指定医療機関の医師が、精神医療に一定以上の経験を有する医師(精神科医等)だった場合、その医師が自立支援医療での訪問看護が必要だと判断すれば、介護保険を使わずに自立支援医療で訪問看護が受けられる可能性があります(精神科訪問看護)。

要約

介護保険を利用している人の場合
指定医療機関の医師が精神科医等でなかったら、自立支援医療で訪問看護に来てもらえない
精神科医等であったら、その医師が必要と判断すれば、自立支援医療で訪問看護に来てもらえる


認知症で訪問看護に来てもらうほどの介護度の場合、ほとんどの人が介護保険を使われているでしょうから、自立支援医療で訪問看護に来てもらえるかどうかで、医師を選ぶという考え方もあります。

夫のかかりつけ医は今も以前も精神科医ではないので、訪問看護に来てもらいたいけれども、介護保険の点数が足りなかったとき、ケアマネージャーから医師をかえるという提案をされました。けれども、医者嫌いの夫をなんとか連れて行けたのが当時のかかりつけ医のクリニックだったので、医師の変更はせず、介護保険をやりくりして訪問看護に来てもらいました。

現在は、要介護5になったことと、別の福祉制度(障がい福祉サービス)が使えるようになったので、やりくりしなくても介護保険の点数を訪問看護に回せるようになりました。

自立支援医療で訪問看護が利用できることのメリットは、介護保険の点数を別のサービスに回すことができることです。

また、大阪府内の国民健康保険に加入なら公費給付があるので、自己負担なしで訪問看護が受けられます。

加入している健康保険に公費給付がなかったとしても、介護保険の負担上限額(高額介護サービス費)より、自立支援医療の負担上限額の方が低いので、自己負担が軽減される可能性があります。


自動車税(軽自動車税)の減免

障がい者手帳を持っていると等級によって、税の控除や減免がうけられます。

障がい者手帳だけで手続きできるものもありますが、堺市では、軽自動車税の減免を受けるためには、精神障がい者保健福祉手帳(1級)自立支援医療受給者証(精神通院)両方が必要です。

わが家が所有しているのは軽自動車ですが、大阪府で自動車税の減免を受けるためには、同じように精神障がい者保健福祉手帳(1級)自立支援医療受給者証(精神通院)両方が必要です。

自動車税または軽自動車税の減免を受ける予定がある場合、自治体によっては、精神障がい者保健福祉手帳と自立支援医療の同時申請しておくことをおすすめします。


指定医療機関がかわるとき

これは私の知り合いの、認知症のご家族を介護されている方の話です。

家での生活がたいへんになったので、認知症の家族にグループホームで暮らしてもらうことにしたら、今まで使えていた自立支援医療が使えなくなったそうです。

話を聞くと、そのグループホームにはかかりつけ医がいて、今までのかかりつけ医からグループホームのかかりつけ医にかわったということです。その場合、病院またはクリニックの変更の手続きをしなければいけません。また、薬局もグループホームの近くの薬局にかわったそうなので、そこも変更しなければいけません。

けれども知り合いは、変更の手続きをする必要があることを知らなかったようです。それで使えなくなった旨をグループホームの職員さんに聞いたそうですが、よくわからない、うちではそのような制度を使たことがない、というような返答だったそうです。

また、施設のかかりつけ医によっては、自立支援医療が利用できないかもしれないので、自立支援医療を利用している人が、施設で暮らすことになったときは、事前に施設の担当者に聞いておいたほうがいいですね。

知り合いは、その後、グループホームの事務の人に話をして、変更の手続きができたそうです。

指定医療機関の変更に、診断書は必要ありません。

自立支援医療の医療機関がかわるときは、変更手続きをお忘れなく。