2023年2月3日は、私たち夫婦の5回目の結婚記念日です。
鬼を払う日。
ですが、鬼を払いたくて、その日に婚姻届けを出したのではありません。
一年で一番、鬼の存在を感じる日だから、その日にしたのかもしれません。
昔話で鬼は、人々に、恐れられ怖がられていますが、私には、鬼が、悪いばかりの存在とは思えない。
例えば『泣いた赤鬼』の青鬼と赤鬼のような一面を持っている。
『泣いた赤鬼』は、昔話ではないですが、きっと、昔から、鬼も、相手を思いやる心を持っていた。
そして、認知症も悪いばかりの存在ではないはず。
悪を悪としてのみ見るのではなく、別の一面を知ろうとすることが大切。
節分は私にとって、自分を戒める日なのです。
それからやはり、夫の記憶に残りやすい日にすれば、すでに、覚えることよりも忘れることのほうが多くなっていた夫が、私と結婚したことを覚えていてくれるのではないか、という望みもかけました。
すべての認知症がそうではありませんが、認知症になると、昔のことは覚えていても新しいことはすぐに忘れてしまうことが多いといわれています。
そうであれば、夫は、私と結婚したことを直に忘れてしまう。
忘れても、思い出せるように。
そのトリガーになることを節分の日に託したのです。
その日は土曜日だったので、区役所の休日受付に婚姻届けを出しに行ったこと。
そこは学校の用務員室のような部屋で、受付してくれたおじさんの机の上にあんパンだかジャムパンだかの菓子パンが2個おいてあったこと。
その帰り道、近所の神社の豆まきに行ったこと。
そんな話をそのあと1年か2年の間、夫が私と結婚したことを思い出すために、幾度となくしたことを今思い返して、しんみりしています。
ほんの1,2年だけでしたが、確かに、節分の日は、トリガーの役目をはたしてくれました。
私35歳、夫70歳、倍の歳の差の節分の日でした。
夫はもう、結婚記念日はおろか、私と結婚したことすら忘れてしまいました。
ですが、もし私が将来ボケてしまったら、次は私が、夫と結婚した日を思い出すための日取りになってくれるでしょう。
そんなわけで、私の頭の中には結婚記念日=節分の日=2月3日という図式が叩き込まれていたので、2021年の2月2日節分の日、日本中の誰よりも動揺したのは、この私だったことでしょう。