普通預金の解約と集約

夫が認知症と診断される1年ほど前のことです。

自分の記憶力や判断力が低下してきていることに不安を感じていた夫は、今自分が持っているお金を、今の自分でも簡単に把握できるようにしたいようでした。

そこで私は、使っていない口座を解約して、普段使っている口座にお金を集約することを夫にすすめました。

当時、私と夫はまだ結婚していませんでしたので、私としては単純に、夫のためになると思っての提案でしたが、妻になってみて思うのは、とても自分のためになったなということです。

もしも、高齢の家族に資産整理がしたいといわれたら、すかさずお手伝いしてあげてください。その行為は、相手のためであるとともに、まちがいなく後々の自分のためにもなります

頃合いを見計らって、打てる先手をコツコツ打っていくことが、先々の介護負担を軽減することにつながっていきます。


手続き

コツコツ解約

通帳を確認して、解約した形跡がなければ、該当する銀行の窓口に行き、解約手続きをしていきます。

合併などで通帳に書かれた銀行名から、数度名前がかわっていた銀行もいくつかあり、そのような場合は、現在の銀行名を調べました。

使っていない口座のほぼすべてで、住所変更をしていなかったり、印鑑を紛失していたりと、何かしらの不備があったのですが、それでも1回の手続きで解約できる銀行があれば、何度か足を運ぶことになった銀行もありました。同じような状況でも、銀行によって手続きに違いがあり、銀行ごとの慎重さというか姿勢の違いを感じます。

使っていない口座の見逃せないところは、最後に記帳された金額が口座の残高であるとは限らないところです。最後の残高がたいしたことないからと見過ごしていると、記帳されいないお金を逃してしまうかもしれません。

もしかしたら、隠れたお金が見つかったりして、なんて淡い夢をみながらコツコツ解約手続きを進めていきました。結果、夢は夢でおわりましたが、夢のおかげで不要な口座をすべて解約することができました。

解約できなければ残高を0円に

夫は転居が多かったので、近所に支店がない地方銀行の口座もありました。

そのような口座に関しては、まず、私の口座から夫の地方銀行の口座に送金をして、残高をお札だけで引き出せる金額にします。

それから、提携銀行のATMでお札を引き出して残高を0円にしました。ただし、この方法は、送金と引き出しに手数料がかかる場合があるので気をつけてください。私は両方無料でやりました。

その口座についても、のちに旅行で支店があるところに行ったときに、ついでに解約しました。残高0円なので放置してもいいのですが、そこはとことんやらないと気が済まない私の性格、故です。


通帳が発行されない口座

通帳が発行されない口座もあるので、キャッシュカードも確認してください。

すでに解約した口座のキャッシュカードだけが残っている場合もありますが、通帳が発行されない口座かもしれないし、通帳を失くした口座のものかもしれません。

集約しすぎると困るかも

口座名義人が認知症だと銀行に知られたら、口座が凍結されてしまうおそれがあるので、口座をまとめすぎると、万一のとき困ったことになるかもしれません。

夫の口座が凍結されたことないので、詳しくはわかりませんが、認知症であることを理由に、ある銀行の口座が凍結されたとしても、そのことが他の銀行に知られなければ、そちらの銀行口座は引き続き使えることになります。

銀行口座が凍結されてしまうと、なんらかの手段により凍結が解除されるまで、その口座にあるお金が使えなくなってします。なので、凍結が解除されるまでの当面の間しのげるだけのお金を、他の銀行に預けておく方が安全かもしれません。

おまけ

家族じゃないと代筆できない!

ある銀行でのこと、夫が、解約するための書類に字を書くのが嫌だと言い出しました。

まだ病院には行っておらず、認知症と診断される前でしたが、すでに認知症が始まっていた夫は、文字(特に住所)を書くのが億劫になったのでしょう。銀行の窓口の人に、私に代筆させると言いました。

その銀行では、本人が手を骨折しているなど、なんらかの字が書けない状態でなければ代筆できないことになっているようでした。

夫はそのルールに納得いかないようで、自分が指名しているのになぜ私が代筆できないのかと、食ってかかります。こうなると、いわゆる暴走老人です。私も止めることができません。

夫の主張と銀行のルールの落としどころを探しながら、よくよく銀行側の話を聞いてみると、家族であれば本人が字を書ける状態であっても代筆できるようです。

当時、私たちは結婚していなかったので、窓口で名乗った夫と私の関係は、友人でした。しまったな、家族を装っておけばよかった、と私は思いましたが、もう手遅れです。

結局、上の役職の人が出てきて、字を書けないから書きたくないという夫の主張が通り、私の代筆が可能になりました。理屈が通るような通らないような主張ですが、銀行も暴走老人の対応をするのがめんどくさくなったのでしょう。

この出来事がきっかけで、私は、家族と友人の立場の違いを意識するようになり、のちに私が、夫との法的な婚姻を選んだ動機のひとつにもなります。

お手伝いが2人

当時、私は大阪に住んでいて、月1回、1週間程度、夫が住む千葉に行く生活をしていました。夫の家の近所には夫の妹が住んでいて、妹と私のサポートによって夫の生活が成り立っていました。

けれども、私と夫の妹とはなんの接点もなく、2人で別々に夫のサポートをしている状態でした。後からわかったのですが、夫の妹も口座解約のお手伝いをしていたようです。

住所変更の確認で手続きが止まっていた銀行から、住所の確認ができたと連絡があったので、夫と一緒に解約しに銀行に行ったら、すでに解約されていたり、口座の最終履歴が古すぎて、口座開設支店に問い合わせないとわからないということで、3度ほど窓口に足を運び、解約するのに手こずっていた口座の通帳が途中で紛失してしまい、余計に手こずるはめになったりしました。

夫の妹が、手続きが途中になっていた口座の解約を夫と一緒にしてくれていて、紛失した通帳は、後日解約手続きをするために夫の妹が保管していたようです。

当人が認知症で、忘れてしまっているので、自分以外のサポーターがいるとわかった時点で、できればお互いに連絡を取り合い、二度手間にならないようにしたいですね。