重度障がい者医療費助成制度

重度障がい者医療は、とてもありがたい制度ではありますが、夫が硬膜下血腫の手術をして1週間入院したとき、退院時の会計で、諭吉さん1人をいかせたら、小銭さんが何人かかえってきたとき「日本の保険制度は近い将来破綻する!」と私の危機感を募らせた制度でもあります。


どんな制度

重度の障がいがある人が、必要な医療を受けられるようにするため、医療費の自己負担分の一部を助成してくれる、大阪府の市町村が実施している制度です。大阪府と大阪府内の市町村の財源のみでまかなわれているので、冒頭のように、重度障がい者医療を利用した支払いで、日本(国)の将来の財政を心配するのは、すこしお門違いではありました。

名称に違いはありますが、各都道府県に似たような制度があるので、調べてみてください。

一例ですが【 市町村名 障がい 医療費 助成 】などで検索するとヒットします。


対象者

堺市の場合 重度障がい者医療費助成制度

以下のすべてを満たす方が対象になります(市町村によって要件が違うことがあります)。

  • 堺市に住民登録がある方
  • 健康保険加入者
  • 本人の所得が所得制限額以下である方
  • 次のいずれかの障がいの状態にある方
    1. 身体障がい者手帳1級または2級をお持ちの方
    2. 知的障がいの程度が重度(療育手帳A)の方
    3. 身体障がい者手帳をお持ちの方で、知的障がいの程度が中度(療育手帳B1)の方
    4. 精神障がい者保健福祉手帳1級をお持ちの方
    5. 特定医療費(指定難病)受給者証または特定疾患医療受給者証をお持ちの方で、障がい年金1級第9号または特別児童扶養手当1級第9号に該当する方

夫は、4.精神障がい者保健福祉手帳1級の所持が該当します。

所得制限はありますが、所得が公的年金からの収入しかない場合、制限以下の方が多数だと思います。

申請手続き

必要書類(健康保険証障がい者手帳)と印鑑(夫の代わりに私が申請するので)を持って、役所の担当窓口に行きます(私は、夫の代理で手続きすることが多いので、認印は常に持ち歩いています)。

堺市では、重度障がい者医療は保険年金課で申請します。ちなみに、国民健康保険や後期高齢者医療保険の高額療養費制度は国民健康保険課、自立支援医療は保健センターです。

堺市内の区役所では、申請や手続きなどをするとき、まず担当窓口の番号札をとります。そのようなシステムの役所が多いのではないかと思いますが、私は、違う窓口の札をとっていて、待ち時間をムダにしたことが何度かあります。なので、役所でムダな時間を過ごしたくない人は、間違えないように注意してください。

重度障がい者医療については、精神障がい者保健福祉手帳1級の手帳と一緒に、制度の案内が送られてきたように記憶しています。

まったく案内のない自治体もあるかもしれないので、障がい者手帳が交付されたり、等級が上がったら要チェックです。


自己負担

各医療機関(病院、クリニック、薬局、訪問看護)につき、1日あたり500円までの負担になります。支払いが500円未満の場合は、その金額を支払います。

また、1か月の負担の合計が3,000円を超えたとき、超えた分が返金されます。

返金には手続きが必要ですが、堺市の場合は、一度手続きすれば、その後は3,000円を超える月があると自動的に登録された口座に返金されます。

入院などで、ひとつの医療機関での支払いが3,000円を超えたときは、その月は以後その医療機関では超えた分の請求はされません。

一部自己負担について

医療費の自動償還について


入院

冒頭でも述べたとおり、重度障がい者医療は入院でも利用できます。

夫の入院時の費用は、重度障がい者医療で医療費の助成を受け、さらに「限度額適用・標準負担額減額認定証」で食事代の減額を受けました。支払い明細のそれらの項目がすごく安かったので、自費分のティッシュペーパーひと箱200円が衝撃的に高く感じました(夫の手術は当日決まったので、手術の付き添いが終わって、すぐにテッシュペーパーを調達して病院に持っていく手間を考えたら、妥当な値段だと、今になれば思います)。

歯科

重度障がい者医療の特徴は、歯科でも利用できるところです。

夫は、前歯3本がブリッジだったのですが、それがとれたときに重度障がい者医療で、入れ歯を作りました(もちろん保険適用の一番安い入れ歯です)。

また、寝たきりになると誤嚥性肺炎の防止のためにも口腔ケアが大切になりますが、重度障がい者医療を利用して、訪問で歯科医師に診てもらうこともできます。

ただし、歯科医師が介護保険サービスの※居宅療養管理指導を利用する必要があると判断した場合、医療保険の自己負担分に加えて、介護保険でも自己負担が発生します。

居宅療養管理指導とは、通院が困難な要介護者の自宅に、医療の専門家(医師等)が訪問してくれて、健康管理や指導をしてくれる介護保険のサービスです。

夫の入れ歯を作ってもらったときは、まだ通院でしたが、その後、同じ歯科医師に訪問で口腔ケアをお願いしているのですが、定期的に訪問している人には、居宅療養管理指導を請求しているそうです(夫は、半年に1度程度の訪問なので、請求されていません)。

また、訪問診療には、歯科医師の交通費や駐車場代がかかる場合があります。

訪問看護

重度障がい者医療は訪問看護にも利用できますが、要介護認定を受けている人の場合、原則、医療保険より介護保険が優先されるので、重度障がい者医療での訪問看護は利用できません

私は、区役所の窓口で介護保険を利用していても、重度障がい者医療で訪問看護に来てもらえる言われたのですが、夫が利用している訪問看護ステーションの医療事務さんが、国民健康保険の※審査支払機関に問い合わせたところ、介護保険利用者は、重度障がい者医療での訪問看護は、利用できないと回答を得ました。

役所の窓口の人は、手続きについては詳しいかもしれませんが、運用についてはそんなに詳しくなかったりします。

審査支払機関とは、医療機関から送られてきたレセプトを審査し、患者が一部負担した残りの医療費を、医療機関に支払う機関です。

ただし、原則と太字にしたように、例外はあります。厚生労働省が定めた疾病等の人と、急に症状が悪化して医師から特別訪問看護指示書(いわゆるトクシジ)が出された人です。手短にいえば、看護師による頻回な看護が必要な疾病または症状の人です。

厚生労働省作成PDF ページ4 参照

このように行政の制度には原則と例外が入り乱れており、入り乱れているのが通常です。


精神病床への入院

自立支援医療は通院にしか利用できませんが、重度障がい者医療は、精神病床への入院にも利用できます

わが家は夫を精神病床へ入院させたことがないので詳しくないですが、認知症の周辺症状の対応で家族が疲弊して、どうしようもなくなったとき、重度障がい者医療を利用して、認知症の人を精神病床へ入院させることができるのではないかと考えます。

精神病床への入院について、ここでは論じませんが、金銭的に余裕がなく、体力気力にも余裕がなく、このままでは介護する家族が行き倒れになりそうなら、そうなる前に、介護する家族が救われることを、私は願っています。


日本の福祉制度と申請主義

重度障がい者医療に限らず、福祉制度を利用していて、わが家の財布は助かっていますが、日本の(特に将来の)財政が心配になります。ですが、必要な人に必要な福祉制度が届いてほしいとも思っていす。

日本の福祉制度は申請主義で、自分が利用できる制度を知り、申請しなければ、利用できません。

けれども、初めの一歩である知るということが難しい。なぜなら、たいていの人は、有ることを知らなければ無いのと同じで、探すこともしないからです。

競争社会で情報弱者が負ける、それはしかたがないことです。けれども、社会福祉がそれではいけない。

制度があるのに、それが必要な人に届かない。そうならないために自分ができること、それはこうして発信していくことだと考えています。