特別障がい者手当(前編)

このブログで紹介している福祉制度の中で、特別障がい者手当の申請が一番手こずりました。その最大の要因である役所。そこへの不信がたまっています。

グチりだすと長くなるので、前編で手当の概要と申請に必要なことを書き、後編でグチります。

特別障がい者手当についての情報を知りたい方は、この前編をお読みください。私のグチに興味のある方は、後編までお付き合いください。


前編

どのような制度か

精神又は身体に著しく重度の障がいがある人に対して、手当が支給される制度です。

支給月額 27,300円(2022年4月より適用)


特別障がい者手当の対象者

  • 満20歳以上であること
  • 極めて重度の障がいがあるため、日常生活において、常時、特別の介護を必要とすること
  • 病院および診療所、介護老人保健施設に継続して3か月以上入院していないこと
  • 特別養護老人ホーム等に入所していないこと(施設の種類によっては、入所していても受給できます)
  • 本人と扶養義務者の所得が一定以下であること

夫が申請してきた制度の中で、一番、認定基準が厳しく、介護度がかなり高い人が対象になる制度です。

役所の窓口で「寝たきりの人」ぐらいの程度でないと認定されないと言われたりしますが、寝たきりでなくても、基準を満たせば認定されます。役所の窓口の人が「寝たきりの人」という言葉を使うのは、例えとして「寝たきりの人」という状態がイメージしやすいからです。家族の介助があれば寝たきりの生活にならない人、というのがどのような状態か、実際に間近で接したことがない人には見えないのでしょう。役所の担当者の言葉に惑わされないようにしてください。

特別障がい者手当という名前から、障がい者手帳と関係がありそうに思えますが、関係ありません。障がい者手帳を持っていなくても申請できますし、認定基準を満たせば受給できます。私が役所で申請したとき、窓口の担当者に、障がい者手帳を持っていれば見せてはもらうが、申請に必須ではないと言われました。

付け加えると、介護保険とも関係ありません。要介護4,5ぐらいなら、受給できることがあるといわれますが、それぐらいの程度の人が該当する可能性があるという、あくまで目安です。

ちなみに、認定されたとき、夫は、精神障がい者保健福祉手帳1級と要介護5でした。


厳しい認定基準

この制度の申請を考えておられる方が一番気になるのが、認知症の家族が認定される状態かどうか、ではないかと思います。なので、まずは簡潔に述べます。

認知症の人が、特別障がい者手当を受給するための認定基準は以下の3点です。

  • 認知症による高度の認知障がいがある
  • 日常生活において常時の介護又は援助を必要とする程度以上の障がいである
  • 日常生活能力判定表で14点以上ある

素人でも判定できるのは、判定表を用いた3段目だけで、あとは漠然としていてわかりにくいですね。

目安としては、日常生活能力判定表で14点以上あれば、申請を検討してみるのがいいと思います。

認知症での申請

役所によっては、認知症では特別障がい者手当を申請できないと言われるかもしれませんが、認知症で申請できます

特別障がい者手当(精神の障がい用)の認定基準に、「症状性を含む器質性精神障害よる、高度の認知障害」とあり、ここに認知症が該当します。また、「器質性精神障害」とあるので、どの種類の認知症でも大丈夫です。

障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害程度認定基準

第二 障害児福祉手当の個別判定 6
(1)
エ 症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)によるものにあっては、高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なもの。
(2)
精神の障害の程度については、日常生活において常時の介護又は援助を必要とする程度以上のものとする。

第三 特別障害者手当の個別基準 3
(2)
第二障害児福祉手当の個別基準の6に該当する障害を有するものであって第三の1の(8)
のエの「日常生活能力判定表」の各動作及び行動に該当する点を加算したものが14点と
なるもの。

厚生労働省

万一役所で、認知症ではムリだといわれたら、スマホでこれを見せてください。役人のルールブックである政令を用いて反論できます。

「高度の認知障害」と「日常生活において常時の介護又は援助を必要とする程度以上の精神の障害」をどのように判定するのかといえば、医師が書いてくれる診断書の内容です。

夫のかかりつけ医は、埋められるところは埋めるという感じで、細かく書いてくれました。夫の日常生活能力は14点で、さらに医師の診断書のおかげもあり、認定されました。

特別障がい者手当の診断書だけでなく、介護保険の主治医意見書や、障がい者手帳の医師の診断書など、かかりつけ医が書いてくれる内容で、区分が1段階かわってくることは、ざらにあるようです。

在宅診療に力を入れている医師は、福祉制度を利用できることで受けられる恩恵(=在宅介護の負担軽減)を理解しおり、その表れが、普段の診察の目配り以外に、診断書の内容の丁寧さにも出ているような気がします。


日常生活能力の程度

日常生活能力の程度0点1点2点
1 食事ひとりでできる介助があればできるできない
2 用便(月経)の始末ひとりでできる介助があればできるできない
3 衣服の着脱ひとりでできる介助があればできるできない
4 簡単な買い物ひとりでできる介助があればできるできない
5 家族との会話通じる少しは通じる通じない
6 家族以外の者との会話通じる少しは通じる通じない
7 刃物・火の危険わかる少しはわかるわからない
8 戸外での危険(交通事故)から身を守る守ることができる不十分ながらも守ることができる守ることができない
特別障害者手当の個別判定 第三の1の8のエの「日常生活能力判定表」

認知症で障がい者手当を受ける場合、この判定表で14点以上が必須のようですが、満点が16点での14点以上となると、やはり厳しいですね。

判定表の食事の欄に”できない”とありますよね。役所で「できないは、食べられない、ということですか?」と聞いたら、「食べさせないと食べられない状態」だと言われました。できない=全介助だそうです。それだと誤判定を生みそうな感じがします。

また、13点以下であっても、認知症以外にも疾患があれば、合わせてかんがみたとき、極めて重度の障がいがあるとされ、認定されることもあるようです。

このとき物を言うのも、医師の診断書の内容です。医師が申請しようとしている制度の認定基準を熟知していれば、それだけ認定に近くなります。逆に医師が制度について知らなければ、書き漏れて不認定になることも考えられます。


診断書とその様式

特別障がい者手当の診断書には(精神の障がい用)と(肢体不自由用)の2種類あり、疾患が認知症のみの人が申請する場合に使用するのは(精神の障がい用)です。間違えないようにしてください。

私は間違えました。特別障がい者手当を申請するほどの重度の認知症であれば、肢体にもそれなりの不自由がありますよ。どっちを使うかなんて素人にはわかりません(グチ後編に続く)。

また、夫の診断書は、内科のかかりつけ医に書いてもらい、支給認定されています。診断書の種類によっては、専門医でないと書けないものもあるようですが、特別障がい者手当(精神の障がい用)の診断書は、内科の医師なら書けます。


申請

申請手続きはかんたんです。必要書類を持って役所の担当窓口に行き、担当者に指示されたとおりに、提出書類を書くだけです。

やっかいなのは、申請にたどり着くまでの道のりで、窓口である役所がトラップをしかけてくることです。


ウェブ上の情報

このページを書くために、ウェブ上にある障がい者特別手当についての情報を探して読みました。

参考になるものもありましたが、気になったのが、ちょっと間違っているものや、明らかに間違っているものが散見されたことです。制度内容もかわるので、古い情報が間違っているのはしかたがないですが、そうではなくて、なんというか個人の憶測で書いているような情報が多かったです。

私も間違ったことは書かないように調べてはいますが、ここに書かれていることが絶対に間違っていないという確証は持てませんし、間違ったことを教えられたり、間違った情報を読んできた分、自分が間違わないという自信が持てません。なので、以上のことはあくまで参考にとどめてください。

特別障がい者手当は、制度自体を知っている人が少ないゆえに、正しい情報を持っている人がとても少ないです。けれども、ゴールは、正しい情報を得ることではなく、特別障がい者手当の支給認定を受けることです。間違った情報のせい遠回りすることもあるでしょうが、多少、情報が間違っていたとしても、申請までたどり着き、さらに認定されれば、そこがゴールです。がんばってやりぬいてください。

ウェブ上には、間違った情報がごろごろしているので気をつけてくださいね。