特別障がい者手当(後編)

特別障がい者手当の申請にたどり着くまでの右往左往している最中、こんなにややこしいのなら福祉制度について利用者目線で書いたブログがあれば、これから申請する人の役に立つのではないかと、役所の窓口の椅子に座りながら思ったのが、このブログを始めるきっかけになりました。そういった意味では、遠回りもムダではなかったです。

以下は、特別障がい者手当の申請を通して、私の失敗と、役所へのグチです。

特別障がい者手当について、お知りになりたい方は、前編をお読みください

後編(役所へのグチ)

役所へ行く1回目

私が躓いたのは、特別障がい者手当の診断書に(精神の障がい用)と(肢体不自由用)があったことでした。

役所の窓口で、特別障がい者手当の診断書がほしい旨を伝えると、担当者が特別障がい者手当の概要を説明してくれた後、障がいの程度と分類が記載された表を見せられて「診断書には、精神の障がい用と肢体不自由用がありますが、どちらが当てはまりますか?」というようなことを聞かれました。その表は、お役所のお堅く不親切な表現で書かれおり、一読して理解できる代物ではありません。

夫が認知症であると伝えると「認知症であるかどうかは関係ないです。認定基準を満たすかどうかです」と言われました。さらに当時の夫の状態を説明すると「それでは、どちらにも該当しそうにありませんが」というようなことを言われました。

その場で考えていても、担当者から有意義な助言を受けられそうにないので、家から役所が近いこともあり、その表をもらって、いったん家に帰りました。

後でわかるのですが、認知症の人が特別障がい者手当の申請をするときの診断書は精神の障がい用です!診断書の様式と病名は関係あります!

役所へ行く2回目

役所でもらった表を家で熟読して、夫はどちらの判定基準でも基準を満たしていそうでしたが、肢体不自由用の方がより多く満たしていそうだったので、肢体不自由用の診断書用紙をもらいに、後日、再び役所に行きました。

役所の担当窓口では、前回と別の担当者が出てきました。
前回もらった表を出し、私が、肢体不自由用の診断書で夫が特別障がい者手当の基準を満たしそうだと話すと、そこから不毛なやりとりが、担当者と私の間で始まります。不毛すぎるので再現しませんが、エラそうに特別障がい者手当の講釈を垂れてくれました。

自分の逃げ道を用意しつつ、上からものを言う役人の態度にイラっとして「判断する権限はあなたにはないんでしょ!医師の診断書で決まるというのなら、決めてもらうために書いてもらうから、その診断書用紙をください!」と私が強い調子で言うと、役所の人はすぐに診断書用紙を出してきました。私はこのような対応をする人が嫌いです。人の顔色を見て出してくるのなら、初めから出せばいいのです。このような担当者のせいで、本来なら手当を受けられる人が門前払いをくらっているのではないかと思うと、腹が立ちます。

さてここで私は、肢体不自由用の診断書用紙をもらって帰ってくるわけですが、認知症の人が特別障がい者手当を申請する場合の診断書は、精神の障がい用です。

ここでも私は、夫が認知症であることと、その時の夫の状態をわりと詳しく説明しています。2度目の担当者も、したり顔のわりに特別障がい者手当について詳しくなかったのです。


医師に診断書を書いてもらおうとする

肢体不自由用の診断書には、身体のどの部分がどのぐらい不自由かを書かなければならず、そのための検査が必要で、かかりつけ医のクリニックではその検査ができないから、総合病院で書いてもらって、ということで、夫が以前、硬膜下血腫の手術をしてもらった総合病院の脳神経外科の医師あてに紹介状を書いてもらいました。

そして予約日、診察室で診断書用紙を見た医師に「○○さんの場合、肢体不自由用ではなく、精神の障がい用ですよ」「たぶん。いや、間違いなく」と言われました。夫は確かに、身体に不自由がありますが、それは認知症によるものなので、肢体不自由用の診断書に病名として書けないそうです。「役所で病名は関係ないと言われた」と、うろたえる私に医師が「役所の人は、診断書の内容をわかっていませんからね」と付け加えました。

さらに、認知症があるので、検査するにも、指示が入らず検査することができません。「書くなら書きますが、書けることがほとんどないし、認定されるのは難しいと思いますよ」「でも、この部分は書けるから、もしかしたら通るのかな?」と言われました。医師も100%の自信があるわけではなさそうです。

そこで私は、月1回ぬくもりカフェ(認知症カフェ)でお世話になっている(かかりつけのクリニックとは別の)クリニックの医療ソーシャルワーカーさんに電話をして、その方から「認知症の人が特別障がい者手当を申請するときは、精神の障がい用ですよ」と回答を得、役所でのやり取りを思い返し落胆するのです。

私は役所で、夫が認知症であることはもちろん、精神障がい者手帳1級であること、要介護5であること、過去に硬膜下血腫の手術をしたこと、どんなことが一人でできないのかなどの状態を説明しています。それも2度。それに対して担当者の返答は2人とも「障がい者手帳の等級や要介護度は、特別障がい者手当とは関係ない。特別障がい者手当の判定基準を満たすかどうかが全てである」とう感じでした。

私が伝えたことが判定基準とは関係なかったとして、診断書様式が精神の障がい用か肢体不自由用か、その判断材料にもならないのですか!と今となっては思います。

役所の担当者は、私に、精神の障がい用か肢体不自由用かの選択を突きつけていた。つまり、どの診断書様式を使うのか判断できない程度の知識の人が、役所の窓口の担当者であるということです。

考えようによっては、2度目に役所に行ったとき、肢体不自由用の診断書用紙をくださいといっている私に、用紙を出し渋った担当者の対応は、あながち間違いではなかったのかもしれません。担当者の中で、なんとなく、認知症は肢体不自由用ではない感じがした、けれども、理由を示して違うとは答えられなかった。

福祉制度についての啓もうチラシなどには必ず「まずは行政へお問い合わせください」と書かれているのですが、問い合わせた先が、制度についてよくわかっていない場合は、どうすればいいのでしょうか。

私は病院の窓口で「担当医師に診断書を書いてもらう必要がなくなった旨、伝えてください」と言い残し、雨の中、車いすに乗った夫に車いす用ポンチョをかぶせ、自身もレインコートを着て、家まで帰ってきたのでした(近くですが)。

クリニックから役所へ問い合わせ

かかりつけ医のクリニックに事の次第を電話で連絡すると、クリニックから役所に問い合わせてみると返事をもらいしました。

その日は午後から夫の訪問リハビリで、来てくれた理学療法士さんに病院でのやり取りを話したら、「そうですね。認知症で身体が動かせないのは、肢体不自由とは違いますね」と言われました。医学的にみれば、症状が同じでも、原因が違えば、まったくの別物なんですね。

家庭の中では原因がなんであれ、自力で立てないならば、自力で立てないことにしか着目しませんが、医学の中では、自力で立てない、ということが医学的な見地で分類されているのでしょう。自分の知らない世界を垣間見た気がしました。

数日後、クリニックから連絡があり「精神の障がい用の診断書なら、かかりつけ医が書けると言っているので、診断書を役所から取り寄せます」と伝えられ、さらに数分後「取り寄せできないそうなので、役所に取りに行ってください」と再び連絡がありました。

クリニックの方が言うには、役所がなにか私に伝えたいことがあるそうです。

きっと、3度目の特別障がい者手当の概要を聞くことになるのだろうという予感がしました。説明した後でないと診断書用紙を渡せないルールになっているような雰囲気を、2度の窓口対応で感じていたのです。


役所に行く3回目

前回前々回とは違う担当者が、窓口対応してくれました。

やはり、3度目の障がい者手当の概要を聞きます。3度見せられた同じ書類の同じ箇所に、同じように蛍光ペンでラインが引かれていきます。特別障がい者手当の説明をするときは、そこに線を引くのがこの役所内のルールなのでしょう。

冒頭、クリニックでもらってくるように言われたので来たと伝えたからか、かんたんなやり取りの後、すんなりと特別障がい者手当(精神の障がい用)の診断書用紙を受け取ることができました。


医師に診断書を書いてもらう

役所でもらった診断書用紙を訪問診療に来てくれた夫のかかりつけ医に手渡します。

ちなみに、かかりつけ医は内科医です。特別障がい者手当について詳しくない医師に、診断書を書いてくれるよう頼んだら、自分は内科医なので書けないと言われた、という話を聞いたことがあります。

後日、かかりつけ医の丁寧な字で書かれた診断書を受け取って、手書きであったことに今更気づきまた。用紙をもらうということは、手書きされるのがあたりまえですが、文字が書かれるまで見落としていました。世の中のIT化に、役所に提出する書類のデジタル化は、いつ追いつくのでしょうか。

さらに、AIを利用して、制度に詳しくない担当者でも、市民に有益な情報が提供できるシステムが作られることは、あるのでしょうか。


役所へ行く4回目

診断書と必要書類をもって役所に行きます。今回は3度目のときと同じ担当者です。

万全の準備をして望んでいたので、申請手続きはスムーズに進みました。

障がい者手帳がある方は持ってきてくださいと言われ、必要書類一覧の「障がい者手帳」の箇所に蛍光ペンでラインまで引かれたのに、実際、持っていったら、精神障がい者手帳については記入する欄がないので必要ないですと言われるオマケはありましたが、申請さえできれば、あとは役所の窓口でなく、それ相応の機関が対応してくれるでしょうから、オマケをオチとして受け取り、帰ります。


認定通知書が届く

申請手続きをしてから約1か月後、特定記録で認定通知書が届きました。

ここまでくれば、役所での二度手間、三度手間も、過去の話、私の引出しにある話題のひとつです。

月27,300円支給されます。わが家の介護保険の負担限度額が月24,600円なので、夫が介護保険のサービスを利用したときの支払いで、食事代や部屋代などの自費分を除いた分が、特別障がい者手当でカバーできます。介護費用の補填として、とても大きいです。

役所でどんな対応をされようと私は突き進みますが、途中でめげてしまう人が出ない対応に改善されることを、役所には強く望みます。