私の葛藤

エッセイ

「わからない」とは 2

世の中は、わからないことで溢れかえっています。 そして、わからなくても生活するには支障がないことも、山ほどあります。 私たちは、わからないことを「わからないといけないこと」「わかったほうがいいこと」「わからなくても、自分は困らないこと」「どんなにがんばってもわかるようになれる気がしないこと」「わかり...
エッセイ

家族介護 ケンカと葛藤

私は、父や母を在宅で介護するつもりはない。 母はパーキンソン病で、今は父と2人で暮らしている。 でもいつか父の介助だけでは、母が自宅で暮らせなくなる日がくるだろう。 そうなっても私は、実家に足しげく通って母の介護の手伝いをするつもりはない。 「お母さんが、お父さんのサポートだけでは家で生活できなくな...
日記

私は、私に私のことを伝え、それを聴き、自分自身に寄り添う

また夫が、家にいるのに「帰る」と言いだした。 私は大きくため息を吐く。 これは自然に出たため息ではなく、わざと吐き出したため息だ。 ため息で、私は、自分の機嫌の悪さを自分に伝えている。 夫への当てつけもあるが、それよりも、自分で自分の気持ちをはっきり意識するために。 認知症の症状のひとつ、帰宅願望に...
日記

『夫の老い』と『私の若さ』 それぞれに必要な時間

朝、夫が「死にそうなんだから」と言って、着替えを拒んだ。 死にそうだから着替える意味がないのか、死にそうだから着替えられないのか、死にそうだから着替えたくないのか、それは私にはわからない。 死にそうだからなんなのか、夫自信も、よくわかっていないだろう。 いろいろなことが『わからない』。 その感覚に、...
日記

大切な怒り 私は夫の怒りを聴く

「そこで、そうやって見ているだけなのか」 出かけたいのに、ひとりでは着替えられない夫が、怒りながら、着方がわからないシャツを床に叩きつけた。 「そんな言い方で手伝ってくれる人なんていないよ」 私は言い返す。 これは、私と夫の真剣勝負だ。 私は、夫の怒りを受ける。夫の怒りを収めることはせず、吐き出させ...
エッセイ

認知症の人を傷つける人

夫は、認知症の周辺症状でも、とくに帰宅願望が強かったです。 そして、夫が「帰る」と言うとき、そこには、私の負担になりたくない、という思いが込められていました。 私たちは、夫が認知症になってから結婚していて、夫には『おかしくなっていく自分と結婚する』という私の行為が、理解できないようでした。 実際、夫...
日記

夫が安心していられる場所

夫の「帰る」という言葉に込められた思い。 今までできたことができなくなり、なにを考えてもよくわからなくて、自分が壊れていくようで、不安、怖い、逃げたい、『安全で安心できるところに帰りたい』。 体の具合が悪い夫が「帰る」と言う。 その言葉の根底には、『自分を不安にするものがない、安心して休むことができ...
エッセイ

苦悩の発露を見届ける

私にとって家庭内の殴り合いは、絶対にダメだと言い切れない行為です。 私には子どもはいませんが、年頃の子どもが家で暴れて、親を殴りつけたなら、親としてその痛みを食らってやる。子どもの成長の痛みとして、親が殴られて受けてやる。そのような考えの家庭があってもいいと私は思っています。 親を殴った子どもは、人...
メッセージ

「早く死んでくれ」と思った自分を恕してあげて

恕す(ゆるす) 思いやりの心で、相手の罪や過ちをゆるすこと。 認知症をわずらう家族に対して、『死んでくれ』と思ったことは、ありませんか。 私は、あります。 思うだけでなく、夫に「死ね」「早く死んでしまえ」と、言ったことも、何度もあります。 いっそ、夫が死んでくれたら、自分は今の苦しみから解放される。...
エッセイ

認知症病棟に入院させようと思った話

私は、かつて一度だけ、夫を認知症病棟に入院させようと、決断しかけたことがあります。 夫がこけて、頭からアスファルトの地面に突っ込み、額を数針だったか十数針か縫うケガをしたときです。 夫のかかりつけ医に、ケガしたときの状況を「鬼おろしのようになった」と言ったら、うまいこと言うねとほめらました。きれいな...