ケアマネージャーや医師、役所の人が、自分や自分の家族が使える福祉制度を教えてくれない、というボヤキをわりとよく聞きます。
ボヤキたくなる気持ちもわかりますが、ケアマネージャーにしろ医師にしろ、専門外の福祉制度の紹介は、本分ではありません。
日本には、さまざまな福祉制度がありますが、どれも、ちょっとやそっと勉強しただけで理解できる代物ではありません。
福祉制度の構造が複雑怪奇すぎて、本分を外れて勉強をしようとすると、おそらく本分の方の勉強が疎かになってしまうでしょう。
そうなれば本末転倒です。
役所の窓口については、書き出すとグチで埋め尽くされるので、ここでは省略します。
ケアマネージャー(介護支援専門員)は、介護保険サービスのスペシャリストであり、かかりつけ医は、医療知識を用いて人をみるスペシャリストです。
まずはそのスペシャルな知識を用いて、自分や自分の家族、ひいては家庭全体がよくなるような提案をしてもらうことが大切です。
たとえば、ケアマネージャー。
使える福祉制度はもれなく紹介してくれるけれど、作成されたケアプラン(介護サービス計画書)には、その家庭の状況が反映されていない、となれば、それはケアマネージャーとしての仕事を果たしているといえるでしょうか。
実際のところは、本人や家族の状況をよくみて、その人たちのためになることを考え、プロの知識と経験を用いて提案してくれる専門職の人たちは、いろいろな状況にちゃんと対応してきた分、介護に使える福祉制度の知識があることも多いですが。
もし、ケアマネージャーやかかりつけ医(かかりつけクリニック)が、自分や自分の家族が使える制度を紹介してくれたとしたら、それは付加価値です。
夫のケアマネージャーが、わが家に、専門外の福祉制度の提案をしてくれたとき、「(自分がケアマネで)お得でしょ」と言っていました。
本分の力量が同程度であれば、もちろん お得な方がいいです。
ですが、ただお得であればいいかというと、介護は人と人との関わりなので、相手の人間性も加味されます。
そして、ケアマネージャーやかかりつけ医の仕事は、人や家庭を見なければ成立しません。
絶対に人の目、人の感覚が必要な専門領域です。
その点、福祉制度の提案はどうでしょうか。
福祉制度の多くは、個人や家庭のデーターをもとに、認定・不認定、等級、区分などを判定します。
これは、AIが取って代われる分野だと思います。
AIに、日本の福祉制度やその認定要件、実例などを覚えていただき、市民が自分の状況や状態を入力していけば、それならこの制度が使えるかもしれませんよ、と提案してくれるシステム。
審査や調査、診断には専門職の見地も必要なので、システムが提案してくれたからといって、確実に認定されるわけではありませんが、このシステムがあれば、市民が、自分に必要で使える福祉制度に、今の数十倍アクセスしやすくなります。
さらに、マイナンバーを活用すれば、入力が必要な情報を大幅に減らせるはずです。
今の技術で、それが実現可能なのかどうか、私にはわかりませんが、日本の複雑怪奇な福祉制度と役所で働く人のクオリティをなんとかするより、技術の進歩とシステムを構築する方が、数百倍、速くて確実な気がします。