エッセイ

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言わないでほしい言葉

『認知症になった本人が一番つらい』 そう言われた時、認知症の人の暮らしを支えている家族は、自分のつらさを、どう処理すればいいのでしょうか。 本人がつらい。それは、確かにそうです。 今までできていたことが、できなくなっていき、自分の中から何かが失われていく恐怖が、常につきまとっているのですから。 では...
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プレッシャーを取り除いてくれた、ヘルパーさん

この5月で、ヘルパーさんに夫の夕食を作ってもらうようになってから、1年4か月になります。 そして、ここ3年ほど、私は、まともに料理をしていません。 料理をしなくなったいきさつは、私が台所でご飯を作っていると、認知症の夫が居間から私のことを何度も同じ用事で呼んだり、ひとりで外に行こうとしたり、気づいた...
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家族介護 ケンカと葛藤

私は、父や母を在宅で介護するつもりはない。 母はパーキンソン病で、今は父と2人で暮らしている。 でもいつか父の介助だけでは、母が自宅で暮らせなくなる日がくるだろう。 そうなっても私は、実家に足しげく通って母の介護の手伝いをするつもりはない。 「お母さんが、お父さんのサポートだけでは家で生活できなくな...
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わからないことだらけなのは『わかる』のに、わからないことがなにか『わからない』

私たちは日々、わからないことに直面しています。 たとえば、最近増えた、セルフレジ。 あの精算機は、お店によって、お金を入れる場所、お札を入れる方向、おつりやレシートが出る位置がバラバラ。 精算が終われば自動でレシートが出るものもあるけれど、中にはレシートを出すのか領収証を出すのか、選択しなければなら...
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認知症の人たちの人となり

認知症になっても、夫はジェントルマンだ、という話です。 夫が利用しているショートステイのスタッフさんが教えてくれました。 ショートステイ内で認知症のある利用者さんが、別の認知症のある利用者さんを批判していたそうです。 批判の内容は、なにかしようとしているけれどうまくできない利用者さんを責めるようなも...
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夫のメモが教えてくれたこと

夫の荷物を整理していたら、同じことが書かれたメモが何枚も出てきた。 夫の字で書かれた、成田空港に行くためのバスと電車の時刻。 それは、夫が、私に会いに、成田から関西空港行きの飛行機に乗るために書いたもの。 夫がそのメモを書いたのは、夫が初めて認知症外来を受診した、1年以上前のこと。 病院に行くことを...
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認知症の人を傷つける人

夫は、認知症の周辺症状でも、とくに帰宅願望が強かったです。 そして、夫が「帰る」と言うとき、そこには、私の負担になりたくない、という思いが込められていました。 私たちは、夫が認知症になってから結婚していて、夫には『おかしくなっていく自分と結婚する』という私の行為が、理解できないようでした。 実際、夫...
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さまよい歩く

認知症の人がひとりで外出して道に迷ってしまうことなどに使わる「徘徊」という言葉を別の言葉に言い換える動きがあります。 「徘徊」には、「あてもなく、うろうろ歩きまわること」という意味があり、「あてもなく、うろうろ」というところが、認知症の人の実情にあっていない、配慮が足りない、ということが言い換えの動...
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苦悩の発露を見届ける

私にとって家庭内の殴り合いは、絶対にダメだと言い切れない行為です。 私には子どもはいませんが、年頃の子どもが家で暴れて、親を殴りつけたなら、親としてその痛みを食らってやる。子どもの成長の痛みとして、親が殴られて受けてやる。そのような考えの家庭があってもいいと私は思っています。 親を殴った子どもは、人...
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認知症の夫は弱者なのか

私は、夫のケアマネージャーに、認知症の夫のことを弱者だといわれて、嫌な気持ちになったことがあります。 社会的にみれば、認知症の人は弱者なのかもしれません。 ですが私にとって夫は弱者ではありませし、認知症の人を弱者だと思ったこともありません。 そもそも弱者とは、どのような人なのでしょうか。 【弱者】 ...