認知症の症状は、はたして誰が『一番』つらいのか

メッセージ



よく、目や耳にする言葉『一番つらいのは、認知症になった本人』

この言葉は、誰に、どう、向かっていくのか、よく考えて発言しないと、認知症の人の暮らしを支えている『家族のつらさ』が、置き去りになってしまいます。

認知症の人の暮らしを支えている家族が『本人が一番つらいのだから』と相手を思いやることで、この瞬間を乗り切るために、ほんの一瞬『本人が一番つらい』を使って踏ん張るのなら、それも有りだとは思います。

けれども、『本人が一番つらいのだから』と、自分に言い聞かせて、すでに限界ギリギリにいるのに、さらに、持続的に踏ん張ろうとしているのだとしたら、そんな言葉は、今すぐ捨ててほしい。

『本人がつらい』のは、傍にいれば、わかりすぎるぐらい、わかります。

『本人のつらさ』がわかっていながら、それを見守ることしかできない家族。

『本人のつらさ』を近くで感じすぎて、巻き込まれて、自分の心すらままならなくなっていく家族。

その『家族のつらさ』が『本人のつらさ』より劣るなんて、誰が言えるでしょうか。

本来この言葉は、介護施設や医療施設などで使われる言葉であって、認知症の人が暮らす家庭内に持ち込む言葉ではないです。

もし、認知症の人の暮らしを支えている家族が、「本人が一番つらいのだから」と自分に言い聞かせて、自分をとことん追い込んでいるのだとしたら、それは本当にやめてほしい。

認知症の人が暮らす家庭内のことをよく知らない人が考えた、視野の狭い言葉だ。家族の暮らしを支えている自分には、関係のない言葉だ。

とでも思って、その言葉を頭の中から蹴散らしてほしい。

日々、認知症の症状に振り回されて、休憩もろくにとれず、疲弊しているとき、人は、ナーバスになって、ちょっとした言葉でも、傷つきます。

もし「本人が一番つらい」という部分で、傷ついているのなら、それは相当、心が弱っている状態ですから、なんとしても休んでほしいところ。

こんなとき、たいていのアドバイスは『デイサービスやショートステイを使って、認知症の人と距離を置いて、自分の時間を作ってください』となりますが、それができたら、どれだけ助かるか。

というのが、家族介護の現実ですよね。

なんなら、た易くできないことを安易にアドバイスされたことに、憤りを覚え、自分の味方がどこにもいないように感じてしまう。

それほどまでに、追い詰められた家族の心は、繊細で敏感で脆い。

そんな状態の自分を守るために、できることのひとつが、自分の殻に閉じこもることです。

殻に閉じこもることは、あまりよくないことのようにいわれますが、自分を守るために自分の殻に閉じこもることは、とても大切な行為です。

ですが、殻に閉じこもったままでいることをゆるさないのが、認知症の症状。

閉じこもっていたいのに、出て行かざるを得なくなる。

それが認知症の人が暮らす家庭の日常です。

だからせめて、自分を傷つける他人の言葉に、耳をふさぎ、自分を守ってください。

自分を追い詰める言葉をあまり自分に言わないであげてください。

自分に優しい言葉にだけ、耳を澄ませてください。

自分もつらいのに、耐えて、よくがんばってるよ。

よくやっているよ。

そう自分に言ってあげてください。

もし、それができそうにないなら、私が言うので、連絡ください。

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