エッセイ

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認知症と引っ越し

認知症の人の引っ越しで、家族が心配することのひとつが、引っ越しによって認知症が一気に進むのではないかということです。 夫は認知症になってから、3回引っ越しをしています。 私も引っ越しのたびに、夫の認知症の進行具合に影響がないかは気になりましたが、それでもこの先二人が一緒に暮らすためには、引っ越しが必...
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認知症の人は不幸なのか

私の夫は認知症であり、世間の物差しを借りて夫の認知症の程度をはかれば、重度かその一歩手前です。 ですが夫は、たぶん幸せです。私は夫ではないので、たぶん、と前置きはしますが、ほぼ確信を持って、夫は日々の生活の中で幸せを感じている、と私は思っています。 私がそう思うのは、私が幸せだからです。 常時、介護...
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じょうぶな頭 と かしこい体

『じょうぶな頭とかしこい体になるために』は、五味太郎さんが現代を生きる子どもたちに向けて書かれた本です。 身近な大人に質問しても「なにをくだらないこと聞くんだ」と一蹴されてしまうようなことを、わらかないことは正直にわからないと言い、だけども自分はこう思うよと、子どもの質問から逃げずに答えています。 ...
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鏡に映る自分と話す 夫の鏡現象

認知症の症状の一つに、鏡やガラスに映る自分に話しかける【鏡現象かがみげんしょう】というものがあります。 これは、夫が鏡に映る自分と話している動画です(2021年9月撮影)。 この動画を公開した意味は、鏡現象の紹介という部分もありますが、それよりも私は、夫が話す内容に注目してほしいと思っています。 鏡...
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デイサービスの職員さんであり、家族介護の経験者

認知症の家族を介護したことがある人の発言は、認知症介護の型にはまらない、という話です。 夫がお世話になっているデイサービスの社長さんは、お父さんが認知症になり、お父さんを在宅で介護した経験から、デイサービスを始められたそうです。 ある日、私と夫は殴り合いのケンカをしました。 高齢とはいえ、体格で勝る...
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私を泣かせてくれた デイサービスの職員さん

泣きながら、夫をデイサービスに連れて行った日のことです。 今は、デイサービスの職員さんに、夫の送迎をお願いしていますが、以前は、私が夫を送っていました。 朝、夫を起こし、身支度をさせて、ご飯を食べる。 それをデイサービスの迎えの時間までに終わらせておかないといけない。 もし、時間に間に合わなかったら...
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認知症病棟に入院させようと思った話

私は、かつて一度だけ、夫を認知症病棟に入院させようと、決断しかけたことがあります。 夫がこけて、頭からアスファルトの地面に突っ込み、額を数針だったか十数針か縫うケガをしたときです。 夫のかかりつけ医に、ケガしたときの状況を「鬼おろしのようになった」と言ったら、うまいこと言うねとほめらました。きれいな...
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夫にとって認知症とは、そしてボケるとは

『認知症の人には、自分が認知症だという自覚は、あるのでしょうか』 夫が認知症初期のころの話です。 夫は、自分の頭の動きがおかしくなっている自覚はありましたが、その原因が認知症であるということは、覚えていませんでした。 たとえば、私が夫に「ボケてるね」と聞くと、「そうだね」と返ってきますが、「それは、...
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認知症の人の世界は、どんな世界なのだろう

認知症の人は、その人の生い立ちや認知症の影響によって生まれる、その人オリジナルの世界をもっています。 そして、当然ながら、認知症の人は、現実の世界を生きていて、生きてきた、人ですから、そのオリジナル世界は、現実世界とリンクしています。 現実の世界には、心地よい感情と不快な感情があり、もし、不快な感情...
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認知症の人の世界があったとしても、夫は、私と同じ世界でも生きている

家にいるのに「家に帰る」と言って、出て行こうとする家族に、「じゃあ一緒に帰ろう」と言って、一緒に出かけ、頃合いを見計らって、家に連れて帰る。 認知症の人の帰宅願望に対する、対応のひとつであり、夫の帰宅願望に対する、私の対応でもありました。 夫は、帰宅願望とともに、外出欲も強く、夫が「出かける」と言い...