「わたし あたまが ぱーだから」 夫が突然 そんなことを言った 私は 笑いながらも それ以上におどろいた 夫からそのようなセリフを 聞いたことがなかったし 夫が笑いをとりにいくときの スタイルでもない 夫が認知症対応型デイサービスに 行き始めたころ 「あんな人たちと一緒にいたくない」と くちびると手ぶりで あんな人たちを 『ぱー』と表現した それが今 自分のことを 『ぱー』と表現している それも愉快そうに
私はその言葉の真意をはかろうとしたけれど、夫にとっては『ぼく、かわいいでしょ』ぐらいの、自分に対する認識を言葉にしただけなのかもしれない。
3年前、夫にとって『ぱー』は、蔑みの言葉だったはず。
それが今、自分のことをそう認識しているのだとすれば、それは、プライドがバキバキに折れた故かもしれない。
そして、『ぱー』の意味も、あのときとは違っているのだろう。