日記

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大切な怒り 私は夫の怒りを聴く

「そこで、そうやって見ているだけなのか」 出かけたいのに、ひとりでは着替えられない夫が、怒りながら、着方がわからないシャツを床に叩きつけた。 「そんな言い方で手伝ってくれる人なんていないよ」 私は言い返す。 これは、私と夫の真剣勝負だ。 私は、夫の怒りを受ける。夫の怒りを収めることはせず、吐き出させ...
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夫が帰りたいところ 目印としてのふるさと

夫は、よく家に帰りたがる。 それは、帰宅願望といわれる、認知症の症状のひとつ。 家にいるのに、家に帰りたがる。 夫が帰りたい家。 それは、今、私と住んでいる家ではない。 夫が帰りたい家。それは、生まれ育ったふるさとの家、のようで、そこだけではない。 ふるさとに帰っても、夫の生家は、もうない。 そのこ...
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夫が安心していられる場所

夫の「帰る」という言葉に込められた思い。 今までできたことができなくなり、なにを考えてもよくわからなくて、自分が壊れていくようで、不安、怖い、逃げたい、『安全で安心できるところに帰りたい』。 体の具合が悪い夫が「帰る」と言う。 その言葉の根底には、『自分を不安にするものがない、安心して休むことができ...
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夫の痛みは、寝ても治らない

散歩が大好きな夫。 毎日1万5千歩、多い日には2万歩以上、歩いている。 まあその歩数のすべてに、私も同行しているわけだが。 連日2万歩以上歩いても、30代の私の足に、異常はないが、70代の夫のヒザやふくらはぎは、悲鳴をあげだす。 夫自身は歩くのが好きだけれども、夫の体、とくに足がそれについてこれない...
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ちょっとだけ逃避行

私は夫と駆け落ちをしたことがあります。 それも結婚後に。 私と夫は、夫がすでに認知症をわずらっていて、さらに歳の差が35ありましたが、私の身内、夫の身内、ともに誰にも反対されることなく結婚に至っています。 では、なぜ、結婚した夫婦が、駆け落ちをすることになったのか。 コロナ禍が始まって少し経ったころ...
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人間にたいして失礼だろう

夫が、自分の認知症に対して発した言葉。 「人間にたいして失礼だろう」 夫にとっては深刻な問題なのだろうが、それを聞いた私は、夫の表現のすばらしさに衝撃を受けた。 なんてわかりやすく素直で的確な表現だろう。 加えて夫は「頭をボカンと殴ってやりたい」とも言った。 認知症には、頭どころか形がないので殴れな...