『介護』と『子育てと保育』 言葉が持つ力

エッセイ



『子育て』と『保育』の違いはなんでしょうか。

  • 子どもがいる場所
    【家 or 保育園や幼稚園】
  • 子どもを見る大人の立場
    【親 or 先生】
  • 同じ場所にいる人
    【家族(親や兄弟姉妹) or 他人(先生や友だち)】

違いは、他にもあると思います。

『子育て』と『保育』を、同列にして語る人もいますが、多くの人は、双方は違うものだと認識していると思います。

家族介護と施設介護

介護も、『家族(在宅)』と『施設』では、違います。

違うけれども、言葉は1つ『介護』だけです。

介護について、造詣がある人の中には、『在宅介護』と『施設介護』を明確に区別して、発言される人もいますが、そうではない人も多いです。

これが少々やっかいな問題を引き起こしていると、私は思っています。

認知症の人への対応法などを読むと、こうすればいいとか、ああすればいいとか、書いてますよね。

  • 同じことを何度も聞いてくるときは、それとなく違う話題を振ってあげる。
  • 家にいるのに帰りたいと言われたら、散歩に付き合ってあげる。
  • 濡れ衣を着せられたら、自分は悪くなくても謝る。

など。

はっきり言って、そんなこと、家で四六時中やっていたら、こっちがつぶれます。

いつでも、そのような対応ができたとしたら、それはもうプロの技です。

そもそも、家族に向けてのアドバイスなのか、それとも介護職に向けてなのか、それがわからない本もあります。

私は、『家族(在宅)介護』と『施設介護』をちゃんと分けて考えてあげることが、双方にとって、いいことだと思っています。

家族介護(在宅介護)

毎夜のように、夫の帰宅願望から端を発する徘徊に、付き合っていた時期。私が介護職の人に言われて、すごく嫌だったことあります。

『自分も施設の利用者さんが、夜中、家に帰りたがったから、一緒に出かけたことがある。強い風が吹いて、二人で吹き飛ばされそうになって、それをきっかけに、もう帰ろう、ということになって、ようやっとの思いで帰ってきた。たいへんだった』というような話です。

徘徊の付き添いの辛さは、在宅も施設も、似たようなものだと考えて、このようなことをおっしゃったのかなと思います。

ですが、家族のたいへんさは、寒かったり、風が強かったり、体力がいったり、そんなことだけではありません。

自分の家にいるのに、家族と一緒にいるのに、なのに帰りたいと言われる、その切なさ、やるせなさ、さびしさ、それらが家族を傷つける。

家族介護には、介護する人も、され人も、家族である。

そこに、耐えがたい痛みがあります。

施設介護

介護職の人たちは、自分たちは仕事が終わったら介護から離れられるけれども、家族はずっと一緒で休めないからたいへんだとおっしゃいます。

ですが、私は、常に施設で働く職員さんと同じような注意深さで、夫を見守っているわけでは、ありません。

以前、私が気を抜いたがために、夫が大ケガをしたことがありましたが、そのとき、私を責める人は、いませんでした。

むしろ、介護で疲れていたのだからしかたがなかった、自分を責めるな、と慰めてもらえました。

これは、私の周りにいる人たちが優しく、さらに、介護する側の余裕の無さを知ってくれていたというのもあります。

ですが、施設では、たとえ本当に余裕がなかったとしても、ケガをさせれば問題になります。

仕事として、他人の安全を預かっているのですから、責任重大。

ケガの程度によっては、大問題になるでしょう。

仕事として、人の命を預かり、利用者さんの安全を常に意識しながら働く。

それが家族介護よりたいへんではない、なんてことは、決してありません。

そもそも、『家族(在宅)介護』と『施設介護』は、比べるものではないのだと思います。

『家族(在宅)介護』と『施設介護』の違いが認識されると

人は、言葉によって、似ているものを区別して認識することができます。

『子育て』と『保育』は、違う言葉が使われているから、似ているようでも、違うものだと、多くの人が認識しています。

たぶん大方の介護職の人たちは、なんとなくでも『家族(在宅)介護』と『施設介護』の違いを意識していると思います。

けれども、初めて、家族を介護することになった人が、施設のような介護を家でする必要はない、という考えに至るには、時間がかかるかもしれません。

それでも、実際に介護をしている家族なら、遅かれ早かれ気づくと思います。

問題は、介護を手伝わない家族、親戚、外野です。

本だけ読んで知った気になって、理想を語ってこられた日には、ブチ切れてもかまわないと思います。

が、以後の関係もあるので、なかなかできませんよね。

『家族(在宅)介護』と『施設介護』の違いが広く認知されれば、理想の介護に追い詰められる家族が減り、いくらかはらくな気持ちで、介護できる家族が、増えるのではないかと思っています。

家族介護は、読んで字のごとく、家族がする介護です

ケンカしたっていいんです。

「おとなしく座ってて!」と怒ってもいいんです。

「忘れるな!覚えとけ!」というような、およそ施設では聞かないような罵声を飛ばしたっていいんです。

殴られたら、殴り返してやればいいんです(ケガさせそうなら、つねるもありです)。

めんどくさかったら、たまには、ご飯がお菓子でもいいんです。お菓子好きな人なら、ご飯より喜んで食べてくれます。Win Win です。

家族介護は、どちらかが一方的にガマンしていては、続きません。

お互いが、お互い様の範囲で、ガマンして、ケンカして、大ケガなく、かみ合わない会話をしながら、それなりに暮らせればいいんです。

私は、しょっちゅう夫とケンカをします。

私は、あるとき、ケンカをなくす努力より、日常のケンカを含めて、仲よく暮らせる努力をするほうが、現実的であることに気づきました。

家族介護の良さは、ルールに縛られないところにあります。

なので、理想に縛られることなく、それぞれの家庭の『教育方針』ならぬ『介護方針』で、やっていけばいいと思っています。