認知症とともに暮らす

エッセイ

認知症病棟に入院させようと思った話

私は、かつて一度だけ、夫を認知症病棟に入院させようと、決断しかけたことがあります。 夫がこけて、頭からアスファルトの地面に突っ込み、額を数針だったか十数針か縫うケガをしたときです。 夫のかかりつけ医に、ケガしたときの状況を「鬼おろしのようになった」と言ったら、うまいこと言うねとほめらました。きれいな...
メッセージ

認知症の症状は、はたして誰が『一番』つらいのか

よく、目や耳にする言葉『一番つらいのは、認知症になった本人』 この言葉は、誰に、どう、向かっていくのか、よく考えて発言しないと、認知症の人の暮らしを支えている『家族のつらさ』が、置き去りになってしまいます。 認知症の人の暮らしを支えている家族が『本人が一番つらいのだから』と相手を思いやることで、この...
エッセイ

夫にとって認知症とは、そしてボケるとは

『認知症の人には、自分が認知症だという自覚は、あるのでしょうか』 夫が認知症初期のころの話です。 夫は、自分の頭の動きがおかしくなっている自覚はありましたが、その原因が認知症であるということは、覚えていませんでした。 たとえば、私が夫に「ボケてるね」と聞くと、「そうだね」と返ってきますが、「それは、...
エッセイ

認知症の人の世界は、どんな世界なのだろう

認知症の人は、その人の生い立ちや認知症の影響によって生まれる、その人オリジナルの世界をもっています。 そして、当然ながら、認知症の人は、現実の世界を生きていて、生きてきた、人ですから、そのオリジナル世界は、現実世界とリンクしています。 現実の世界には、心地よい感情と不快な感情があり、もし、不快な感情...
エッセイ

認知症の人の世界があったとしても、夫は、私と同じ世界でも生きている

家にいるのに「家に帰る」と言って、出て行こうとする家族に、「じゃあ一緒に帰ろう」と言って、一緒に出かけ、頃合いを見計らって、家に連れて帰る。 認知症の人の帰宅願望に対する、対応のひとつであり、夫の帰宅願望に対する、私の対応でもありました。 夫は、帰宅願望とともに、外出欲も強く、夫が「出かける」と言い...
エッセイ

認知症の人につくウソ 誰のためにもなっていないウソかもしれない

認知症の人への対応が書かれた本やサイトを読んでいると、ウソをついて、落ち着かせる対処法が書かれています。 さっきご飯を食べたのに「ご飯は、まだか」と言われたら、「今、用意しているところ」と言う。 家にいるのに「帰る」と言われたら、「もうすぐ迎えが来ますよ」と言う。 一緒に住んでいない、すでに独立した...
エッセイ

夫の幻聴と自分が壊れていく恐怖

これはまだ、夫の認知症が初期のころの話です。 夕食の後、夫は台所で洗い物、私は別の場所で用事をしていました。 先に私の用事が片づいたので、夫を手伝おうと話しかけたら、夫に「うるさい」と怒鳴らました。 ただ話しかけただけで怒られたので、私も訳がわからず戸惑いましたが、反射的に「ごめんなさい」と謝ってい...
メッセージ

私には、感情も 起きた出来事も 残る

『認知症の症状によって、起きた出来事は、すぐに忘れてしまったとしても、そのとき感じた感情は、長く残っている』 この言葉は本来、『認知症の人も、すべてを忘れるわけではない』ということが、いいたかったのだと思います。 ですが、解釈の仕方によっては、『感情は残るのだから、認知症の人に嫌な思いや不快な思いを...
メッセージ

傷つかない生き方はない

今でこそ回数は減りましたが、以前はよく、夫とケンカをしていました。 認知症の人に言ってはいけないとされている言葉も、ずいぶんたくさん言いました。 そもそもですが、なぜ認知症の人に言ってはいけない言葉があるのでしょうか。 それは、相手の自尊心を傷つけるからです。 ですが、私たちも 家族の言葉で、ずいぶ...
エッセイ

『介護』と『子育てと保育』 言葉が持つ力

『子育て』と『保育』の違いはなんでしょうか。 子どもがいる場所【家 or 保育園や幼稚園】 子どもを見る大人の立場【親 or 先生】 同じ場所にいる人【家族(親や兄弟姉妹) or 他人(先生や友だち)】 違いは、他にもあると思います。 『子育て』と『保育』を、同列にして語る人もいますが、多くの人は、...